2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720180
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
鈴木 真 Notre Dame Seishin University, 文学部, 講師 (60400610)
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Keywords | 塩商 / 八旗 / 長蘆塩 / イェへ=ナラ氏 / 安氏 / 康煕帝 / 雍正帝 / 査氏 |
Research Abstract |
本研究「清朝の八旗と塩政に関する研究」は,満洲人王朝・清朝(1616~1912)の支配層である旗人集団が,国家財政の重要収入源である塩政にいかにして関与していたかを明らかにすることで,清朝の特質を解明しようとするものである。 本研究では,清朝における塩政の腐敗を,これまでのような「制度の弛緩・硬直」「旗人官僚と塩商人との癒着」といった表面的な理解ではなく,かれらがどのような場所において,どのような手段によって結合していたのかを探り,それが清朝の宮廷政治史にどのような影響を与えていたか(または逆に塩政の方に影響を与えていたか),双方がどのように整合的に理解できるのかを解明しようと試みた。 具体的には,康煕朝末期に発生した長蘆塩の私塩販売事件を取り上げ,この事件の背景に,宮廷内の権臣であるイェへ=ナラ氏の大臣らが存在したこと,かれらが有力な塩商や康煕帝の第九皇子と結びついて塩政を壟断していたことなどを明らかにした。 続いて考察の対象を,直隷(河北省)・漸江省の双方に地盤を置いていた塩商査氏にまで拡大し,査氏の家系について家譜などの現地調査を進め,かれらの官界進出への戦略を康煕・雍正年間の政治史と関連させて分析した。そして,これまで漢人知識人の筆禍事件のひとつとして理解されることの多かった雍正初年の査嗣庭の「文字の獄」が,実は康煕朝より続く宮廷内の権力闘争の結果生じた事件であること,査氏の背後には権臣イェへ=ナラ氏が存在し,そのため雍正帝は数多い江南の知識人の家系から査氏に目をつけ,かれらに対する弾圧をおこなったことなどを指摘した。 最後に,清朝の塩政は宮廷政治史と密接に関連しており,清朝の塩政の解明には,経済史と政治史の双方向からの分析が不可缺であると結論付けた。
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