2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井坂 理穂 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (70272490)
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Keywords | インド / グジャラート / 近現代 / 歴史認識 / ナショナリズム / インド文学 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成22年度は、これまでの研究成果をもとにした学会報告を行ったほか、これらの成果を論文として出版するための準備を進めた。まず7月には、ドイツ(ボン)で開催された近代南アジア研究・ヨーロッパ大会(European Conference on Modern South Asian Studies)に参加し、研究成果の一部を報告した。ここではとりわけ、グジャラート地方の政治運動のなかで、過去に起きた「死」がどのように語られ、政治的に利用されていったのかに着目した。この大会では、複数の研究者との間で、歴史記述、記念碑、博物館など、様々な側面から、南アジアにおける過去の語られ方、その変容や多様性について意見交換を行い、多くの示唆を得た。また、歴史記述の変遷を、インド知識人たちのナショナル・アイデンティティ構築の試みとの関連から分析し、その一部をセミナーなどで発表した。 これらの成果発表とあわせて、前年度までの資料収集で不足していた部分を補足する作業も行った。10月にインド(デリー、ムンバイ)の文書館、図書館で、議会文書、個人文書などの資料収集を行うとともに、他地域との比較を念頭に、関連文献の収集を行った。この他に、当初予定していたが、時間上の制約から現地調査を行うことできなかった地域での歴史記述について、他の研究者たちの協力を得ながら資料収集を進めた。平成22年度は、とりわけパンジャーブ地方の事例に着目し、独立後に分離主義的な政治運動が一時期活発化したこの地において、地域の歴史が「インド」との関係のなかでどのように語られてきたのかを検討した。このように他地域の事例と比較することによって、グジャラート地方の歴史記述・歴史論争の特徴が明らかになるとともに、諸地域の歴史記述が、言語、宗教、カーストなどに基づく重層的アイデンティティの相互関係や、「インド」との政治的関係の変化に伴い、様々な変容をとげる過程に、多くの類似点が見出されることも明らかになった。
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Research Products
(4 results)