2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720185
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
丸橋 充拓 Shimane University, 法文学部, 准教授 (10325029)
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Keywords | 軍事秩序 / 府兵制 / 募兵制 / 互酬 / 軍事財政 |
Research Abstract |
今年度は、募兵制期においてとりわけ典型的に現れる「君臣間の互酬的軍事秩序」の足取りについて、府兵制期までさかのぼって探求した。 従来、府兵制は兵役制度としての面が強調され、「衣糧自備の安価な軍隊」と見なされてきた。ところが近年の財政史研究では、府兵の自備する衣糧は軍需の一部をまかなうに過ぎず、それ以外に相当の官給が行われていたことが明らかになりつつある。つまりこれまで募兵制研究において専ら課題とされてきた「軍事支出の存在」は、府兵制にも適用可能ということになる。 そこで互酬的軍事秩序の存否を府兵制期以前にさかのぼって探求することを目指す本研究課題の一環として「軍事財政の持続性」という視点を取り入れ、分析を行った。その結果、(1)府兵制成立当初は地方司令官(総管など)が任地において独自の財政運営を行いえたこと、(2)隋代になると彼らから財政権が回収され、軍府(鷹揚府)への物資供給が民政系統(州県)に移管されるようになり、財政によって媒介される皇帝-兵士間の軍事秩序形成の-画期として注目されること、(3)唐代になると中央指令のもと、都督府が中継拠点となって軍事物資の物流網(外配体制)が整備されたことが近年明らかにされたが、それは(2)の構造をより鮮明にしたものと位置づけうること、等の見通しを得た。 以上の論点は、まずその一部を唐代史研究会夏期シンポジウム(テーマ「軍事と財政」)において報告したが、その後おこなった分析と合わせて、現在論文化の作業を進めており、来年度中に発表する予定である。
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