2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720185
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
丸橋 充拓 島根大学, 法文学部, 准教授 (10325029)
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Keywords | 軍事秩序 / 募兵制 / 府兵制 / 互酬 |
Research Abstract |
『大唐開元礼』の「軍礼」に集約された古典的軍事秩序が採用された思想的文脈について、特に次の2つの視角から分析を進めた。 (1)出征儀礼の検討 中国では古くから戦争に出陣するとき、および帰還するときに宗廟(祖先祭祀の場)と社(土地神祭祀の場)への告礼を行ってきたが、天子が行う戦争の場合はこれに天への告礼が加わる。この点について、平成22年度に行った概括(本課題とは別に分担研究者となっている科学研究費課題「中国古代軍事制度の総合的研究」の研究会において報告)を掘り下げ、以下の作業を展開した。 (1)告礼実施例の蒐集・整理を進めた。まだ作業の途中であるが、現時点では、廟・社への告礼が古来広範にみられる営みであったこと、それに対して天への告礼は限定的であり、かつ出現の時期・経緯を見定めるには慎重な実証が必要であることを確認している。 (2)出征儀礼が持つ思想的な意味合いについて、礼学史料(経書の注疏や経解類)に依拠して検討を進めた。魏晋南北朝期については今文・古文論争との関連が重要であると考えられる。 (2)訓練儀礼の検討 有事の出征儀礼と対置される平時の訓練儀礼のうち、射礼の位置づけについて、平成22年度に行った学会報告の成果(射礼がもともとは嘉礼(共同体儀礼)に分類されていたにもかかわらず、次第に軍礼のカテゴリーに移行していく過程の解明)に基づき、今年度はその思想史的・政治史的な意味合いを分析した。射礼と同じ訓練儀礼である田猟(狩猟儀礼)は、古来「国法」宣布の場として重視されてきたことが、楊寛氏・増淵龍夫氏・籾山明氏によって法制史的視角から明らかにされており、射礼分析の際にも示唆的と考えられる。
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