2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国唐宋時代の河南地域における地域開発と軍事集団に関する研究
Project/Area Number |
19720188
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山根 直生 Fukuoka University, 人文学部, 講師 (70412567)
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Keywords | 唐宋 / 河南 / 藩鎮 / 節度使 / 軍閥 / 宗族 / 移住 / 軍事集団 |
Research Abstract |
今年度は、唐宋の河南地域(現在の河南省と安徽省北部一帯)に関する、政治史的視点、歴史地理的・環境史的視点という二方向からのアプローチのうち、前者については発表2件と雑誌論文2件を達成できた。なお、後者のアプローチに関しても、地図の入手、近隣地域への渡航による現地状況の把握という準備段階を果たしており、次年度以降の布石とする。 発表「唐後半期藩鎮史再考-唐宋間政治史叙述、河南大運河両岸地帯への考察の試みとして」では、唐宋間において各地に割拠した軍閥のごとき存在、節度使・藩鎮に関する通説を史料の再検討と軍閥という概念の転換によって再検討した。一地域を実行支配して「藩鎮」と呼ばれた節度使は実際には極めて限定されており、節度使に充てられた多くの軍事集団にとって地域支配は必ずしも求めるところでなく、そうした彼らの実態は軍閥よりむしろ一種の軍事企業家として解すべきこと、そしてその背後には当時東ユーラシアの流通経済を支えていたソグド人勢力の存在が看取され、近年盛んなソグド研究との接続が研究上の意義として期待できること、などを説いた。この内容は来年度中にも論文化し、本研究課題の理論的出発点のひとつとする計画である。 発表「唐末徽州の黄?伝説と明人程敏政-移住伝説の創造と変容」およびこれを文章化した論文「宋元明の徽州における黄?移住伝説」では、宋代以来徽州で語られた移住伝説が、唐末の争乱下で実際には対立していた諸宗族集団の記憶を隠蔽し、一体性を演出する「避難伝説」として拡大していったものであること、広く語られたこの伝説とはむしろ矛盾する事例こそ信頼しうるものであること、を明らかにした。徽州も含め唐末江南に移住していった宗族集団は、その多くが河南から出発しており、最も史料の豊富な徽州地域からこうした知見を見出したことは、いわば本研究課題で追究する時聞軸上の終着点を明らかにするものと言える。
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Research Products
(3 results)