2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸渡 文子 Osaka University, 文学研究科, 招聘研究員 (30432529)
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Keywords | 西洋史学 / イギリス / 老人史 / 世代 |
Research Abstract |
2年目にあたる平成20年度には、引き続き国内において当研究課題に関連する文献および情報の収集と整理を行い、科研費の一部をそのために支出した。計画段階で予定していたイギリスにおける資料の収集は、大学における教務上のスケジュール調整が難しく実施できなかった。そのため、前年度のイギリスでの資料調査において入手した、教区聖職者の日記や、ロンドン首都文書館が所蔵する、イズリントン教区(1863-1864年)における労働者階級男性の教区訪問員の日誌を資料として、1830年代から70年代にかけての教区聖職者と老人との関係の変化を分析した。その結果、1830年代以降には、教区聖職者が老人を福祉活動の対象とみなすようになったことを明らかにし、その歴史的背景として、国家と国教会の関係の変化や専門職化の重要性を指摘した。研究史上では、1830年代から19世紀末にかけて、イギリスでは経済自由主義を背景として、老人などの「弱者」に対する扶養の社会的義務は否定される傾向にあったとみなされてきた。本研究をとおして、同時代のイギリスにおける老人に対する態度は、従来の研究で明らかにされていたものよりも複雑であったことが明らかになった。この研究成果を、『待兼山論叢』第42号史学篇に論文として発表した。また3月には、この研究に関連して他の研究者との意見交換を行うべく「世代と歴史学」をテーマとする勉強会を開き、科研費の一部を勉強会で使用する文献の購入にも充てた。
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