2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720191
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸渡 文子 Osaka University, 文学研究科, 招聘研究員 (30432529)
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Keywords | 西洋史学 / イギリス / 老人史 / 世代 |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成21年度は、これまでの2年間の研究において不足した部分を補足することを目的に、夏季に英国ロンドンにて、19世紀末における英国教会の聖職者の退職・年金制度に関する史料を収集した。この史料は、イギリス社会の専門職化と世俗化という流れのなかで、聖職者の専門職としての地位が低下したのにともない、高齢聖職者が専門職化を阻む存在として問題視され、退職制度の導入の必要性が議論され始める過程を明らかにしている。聖職者自らの老いに対する認識を考察することによって、「老人の誕生」という過程に19世紀イギリスの聖職者が果たした役割がいかに複雑なものであったかを明らかにしたことが、この研究の意義といえる。10月には、大阪大学懐徳堂秋季記念講座において、「西洋史のなかに見る高齢者ケア、私たちの現在とのつながり」という題目で公開講演を行い、そのなかで「老人の誕生」という過程に、国教会教区の聖職者や、ヴォランティアとして活動した女性たちが果たした役割についての研究成果を発表した。また、本研究の成果を、「世代関係の歴史」という大さな枠組みのなかに位置づけることを目的に、前年度3月から「世代と歴史」研究会を主催しており、今年度には計2回の会合を持った。これまでの研究会活動の成果として、歴史や社会の分析概念としての世代の重要性についての見解をまとめる論稿を執筆し、『パブリック・ヒストリー』第7号(2010年)において発表した。
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