2008 Fiscal Year Annual Research Report
ワイマル期ドイツにおける右翼労働運動の展開に関する実証的研究
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19720192
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
原田 昌博 Naruto University of Education, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (60320032)
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Keywords | 西洋史 / ドイツ / 現代史 / ナチズム / 右翼 / 労働運動 |
Research Abstract |
本研究代表者はこれまで、ワイマル期ドイツの「右翼労働運動」の中でもナチズム運動の枠内で活動していた労働者組織について研究を進めてきた。2008(平成20)年度においては、新たに「ナチズム運動外でナチ党員が関わった労働者組織」および「ナチスとは基本的に異なる右翼・保守的な労働者組織」に注目し、これらに属する具体的組織に関する史料収集およびその分析を進めた。 具体的には、まず2007(平成19)年度に行った調査結果の分析を受けて、5月にその成果を雑誌論文として発表した(論文名「ワイマル期ドイツにおけるフェルキッシュ運動と「労働組合」」)。この論文では、ワイマル期ドイツの右翼労働運動の一事例としてフェルキッシュ闘争労働組合(VKG)を取り上げ、その成立・展開過程および思想、ナチズム運動との関係を分析し、このVKGが1920年代半ば以降ナチズム運動に接近し、その組合員はやがてナチス経営細胞組織結成において重要な役割を果たすことになった点が明らかになった。 さらに、8月下旬から9月中旬にかけて渡独し、ベルリンの連邦文書館(Bundesarchiv)や州立文書館(Landes-archiv)および国立図書館(Staatsbibliothek)にて上記テーマに関する未公刊史料(組織規約、パンフレット類、内部文書、書簡、警察報告など)の調査・収集を行った。とりわけ今年度は、右翼労働運動の一組織である「シュタールヘルム(鉄兜団)自助組合(Selbsthilfe)」および「ドイツ援助労働組合(Gewerkschaft Deutsche Hilfe)に関する史料を集中的に調査・収集した。これらの組織に関しても、これまでほとんど研究の蓄積がなく、その組織実態に関しては不明な点が多かったが、今回の調査の具体的分析を通して、右翼サイドから労働者層への働きかけはワイマル期全体を通じて存在していたことがさらに明らかになっていくことが期待される。今後の予定としては、まず「ドイツ援助組合」、その後、史料的に大部な「シュタールヘルム自助組合」の実態分析を行う予定である。
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