2009 Fiscal Year Annual Research Report
ワイマル期ドイツにおける右翼労働運動の展開に関する実証的研究
Project/Area Number |
19720192
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
原田 昌博 Naruto University of Education, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (60320032)
|
Keywords | 西洋史 / ドイツ / 現代史 / ナチズム / 右翼労働運動 |
Research Abstract |
本研究代表者はこれまで、ワイマル期ドイツの「右翼労働運動」の中でも、ナチズム運動の枠内で活動していた労働者組織、さらに「ナチズム運動外でナチ党員が関わった労働者組織」および「ナチスとは基本的に異なる右翼・保守的な労働者組織」に注目し、これらに属する組織に関する史料収集・分析を進めてきた。 2009(平成21)年度においては、2008(平成20)年度に行った史料調査・収集の成果を分析し、その成果の一部を公表した。具体的には、右翼労働運動の一組織である「シュタールヘルム(鉄兜団)自助組合(Selbsthilfe)」および「ドイツ救援会労働組合(Gewerkschaft Deutsche Hilfe)に関する実態分析を行った。これらの組織に関しては、これまでほとんど研究の蓄積がなく、その組織実態に関しては不明な点が多かったが、今回の具体的分析を通して、右翼サイドから労働者層への働きかけはワイマル期全体を通じて存在していたことがさらに明らかになった。 具体的な活動としては、2009年6月に本研究の成果の一部を学会報告として公表し、2010年3月には「ドイツ救援会労働組合」の実態に関する研究成果を雑誌論文として発表した。この論文では、まず第1に、ワイマル共和国初期(1919~1923)に頻発した右翼陣営による政治的殺人(フェーメ殺人)の状況を概観し、第2に右翼政治犯に対する救援組織の成立と展開を明らかにした後、最後に、右翼政治犯救援組織の一つである「愛国的受刑者救援会(VGH)」と密接な関係を持っていたGDHの思想と活動を、残された史料に基づき検討することで、ワイマル期ドイツにおいて特徴的な右翼政治犯の保護を目指す団体も労働運動を展開し、さらに共和国後期にはナチズム運動とも接点を持っていた点が明らかになった。 もう一つの分析対象組織である「シュタールヘルム(鉄兜団)自助組合」に関しては入手した史料が極めて大部で多岐に亘るため、現在のところその分析・検討を継続中である。平成22年度中にはその成果を学会発表や雑誌論文を通じて公開する予定である。
|