2007 Fiscal Year Annual Research Report
近世イギリスの移民支援策からみる移民とホスト社会の意識形成
Project/Area Number |
19720194
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 Kumamoto University, 文学部, 准教授 (00324731)
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Keywords | 近世イギリス / 移民 / 救貧 / 外国人教会 / アイデンティティ |
Research Abstract |
平成19年度においては、研究計画に従い、海外(ロンドン)の文書館・史料館において文献・史料収集を積極的に行った。また、ロンドン滞在期間中には、本研究に関連するセミナーや学会に出席し、本テーマに関連のある研究者との意見・情報交換を行った。 実施した研究内容は以下の通りである。1.ユグノーライブラリ、ロンドン歴史学研究所、大英図書館などの文書館において、フランス人教会、外国人関連の福祉策や関連委員会などの史料について、調査と収集を行い、漸次その精読を行った。2.近世ロンドンにおける多文化共生のあり方を、外国人教会とそのコミュニティ、それらに対応するホスト社会の相互作用、具体的には両者が作成する嘆願書とその帰結から考察した。3.外国人教会による慈善活動の詳細な実態を長期的な視点から解明するべく、本研究対象より時代をさかのぼり、16世紀後半の外国人教会(とくにフランス人教会)の活動の再検討と再構築を行った。4.17世紀後半から18世紀初頭のユグノーに対するフランス人教会の活動についての分析を進めた。これについては、すでに一部分析を開始しているフランス人教会の長老会議事録とフランス人教会の義援金支給に関する記録の詳細な分析を継続して行った。またさらに、イギリスの当該テーマ研究者が集まる研究会・学会に参加して意見交換を行い、成果が少ない近世移民とホスト社会に関する研究において、両者の相互作用、アイデンティティ形成にフォーカスした本研究の重要性について共通認識が得られた。本年度の研究により得られた成果は教会による移民支援策の長期の継続性とそれのアイデンティティ保持への有効性である。その成果の一部を次年度に刊行する予定である。
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