2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世イギリスの移民支援策からみる移民とホスト社会の意識形成
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19720194
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 Kumamoto University, 文学部, 准教授 (00324731)
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Keywords | 近世イングランド / 帰化 / デニズン / 救貧 / ユグノー / パラタイン移民 / 外国人共同体 |
Research Abstract |
本研究は、17世紀から18世紀前半のイギリス社会における移民支援策とそれにかかる議論が、他者統合や移民とホスト社会双方の意識(アイデンティティ)形成に果たした役割の解明をその目的とする。本研究の対象となる移民は、主に17世紀後半から18世紀前半に流入したユグノー、パラタイン移民である。また、移民支援策とは具体的には、当該時期に実施され、議論となった移民に対するイギリス社会と外国人教会による救貧事業と外国人への法的地位の保証(帰化法の制定と撤廃)である。 本年度の実績は以下のとおりである。第一に、平成19年度から続けていた、外国人教会の議事録の分析と救貧事業に関する研究を論文としてまとめた。次年度にはホスピタリティに関する論文集に所収され、刊行の運びとなる予定である。第二に、昨年度の成果に基づき、昨年度中に行ったパラタイン移民に関する国際学会での報告での質疑応答をもとに、研究を進めた論文として刊行するため、現在準備中である。そのために、ロンドンのBritish Library, The National Archivesで最終的な調査・確認を行った。第三に、16世紀後半から18世紀前半における帰化や外国人の法的地位をめぐる議論の変遷を明らかにするべく、帰化関連の史料の分析を行い、12月に研究会で報告した。この研究内容については次年度中に論文としてまとめる予定であり、そのために必要な追加調査をロンドンでおこなった。第四に、16世紀後半の帰化・デニズンの問題と移民受容について研究を進め、研究会で報告を行い、世界思想社から刊行予定の『文化的多様性のイギリス史』所収論文として提出済みである。次年度中には刊行され予定である。
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