2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国新石器時代における食品加工具に関する基礎的研究-使用痕分析からのアプローチ-
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19720205
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
加藤 里美 Kokugakuin University, 國學院大學研究開発推進機構, 講師 (40384002)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 使用痕 / 食品加工 / 粉食文化 |
Research Abstract |
本研究では、中国新石器時代の食品加工具である「すりうす」の使用痕分析を通して、食品に対する働きかけを分析し生産活動と多様な社会(集団)の「動態」、それに伴う文化要素を明らかにすることを研究の目的としている。そのために、これまでに用途と加工対象物別に使用モデルの構築のために「すりうす」の使用痕サンプルを作成し、実物資料を観察し、「すりうす」の加工面の肉眼観察と顕微鏡レベルにおける使用痕分析を行ってきた。本年度は、昨年度に開始した実物資料の観察とサンプル作製およびサンプルとの比較検討作業を継続して行なった。本年度は平成22年3月に中国調査を実施し、中国山東省煙台市博物館、河南省文物考古研究所、新鄭市博物館の資料37点について肉眼観察による熟覧・顕微鏡観察・写真撮影し、これまでとは明らかに異なった使用痕のタイプが確認された。従って地域で使用方法が異なっていることが確認できた。しかし、サンプルには見られないタイプの使用痕が確認されており、来年度はサンプル作成を継続し磨盤・磨棒の使用法や加工物について検討を重ねる必要がある。また、石器使用痕分析研究会においては本年度の調査成果を報告し、より詳細な使用痕の観察について分析方法や石器の使用法等について再検討すべき点が明らかになった。さらに、山東大学開催の国際シンポジウムにて、途中経過ではあるが使用痕分析の成果に基づく生業の混在化復元モデルについて理解が得られた。昨年、観察資料が大型の場合の金属顕微鏡のアーム長不足問題については、大型の顕微鏡を携行することで解決した。これらの過程で、「すりうす」の使用方法、加工対象物などについて、一定の目測を立てることができた。最終年度となる平成22年度は、サンプル数を増やし、使用痕分析と使用方法、加工対象物などの要素について類型化し、中国における粉食文化の成立に関する研究に有効な結果を導き出すことを目標とする。
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