2009 Fiscal Year Self-evaluation Report
中国新石器時代における食品加工具に関する基礎的研究-使用痕分析からのアプローチ-
Project/Area Number |
19720205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Archaeology
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
KATO Satomi Kokugakuin University, 研究開発推進機構, 講師 (40384002)
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Project Period (FY) |
2007 – 2010
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 使用痕 / 食品加工 / 粉食文化 |
Research Abstract |
(1) 研究の概要 食品加工具である「すりうす」の使用痕分析を通して、食品に対する働きかけを分析し生産活動と多様な社会(集団)の動態、それに伴なう文化要素を明らかにすることが本研究の目的である。 中国大陸におけるいわゆる「うす」の歴史は長く、本研究で分析対象とする「すりうす」は、新石器時代の盛行した下石と上石が一組となった食品用の加工具で、皿状の下石に加工対象物をのせ、両手で棒状の上石を持ち下石の上を並行に移動させることで粉砕、粉化するいわゆるサドルカーンである。雑穀類とイネといった食品の違いによって北部では「すりうす」、南部では「うす」が用いられ、各々の食体系を形成していたといえる。そこで申請者はかつて中国華北・東北地区における初期農耕社会を定義する指標である「すりうす」について、定義、出土時期、出土地点、出土状況、形態分類の検討といったことを検討し「すりうす」研究の最も基本的な条件を整えた(加藤2002『中国新石器時代における食品化工具の考古学的研究』國學院大學大学院叢書9)。この研究経過において最終的に解決されていないのは、「すりうす」で何をどのように加工したのかという問題である。本研究では以下に述べる点について、使用痕分析からのアプローチによって食物に対する人の働きかけを解明しようとするものである。これまでの研究において提示されてきた使用方法に関する見解は、(1)アワやムギなどを粉化するための道具である(2)アワやムギなどを脱穀するための道具である、とするもので申請者も以前に幾度かにわたる中国調査で、使用痕の観察を試みたが、これらの相違を肉眼観察で判別する事は不可能であった。(2)の見解の裏づけには、穀物を粉化する「磨」はコムギとその加工方法と共にもたらされ(天野元之介1979『中国農業史研究』増補版 お茶の水書房)、目的と用途に応じて多種多様に変化しながら現在にいたるまで利用されているが(陳文華1993『中国農業考古図録』他)、新石器時代に隆盛した「すりうす」と漢代以降に隆盛する「磨」(いわゆる回転臼)との間を結ぶ道具は確認できず、断絶しているといえる。さらに、『方言』の記事以前には粉化する食品加工方法はなかったとして、「すりうす」は粉化用の加工具ではなく脱穀用の道具とする意見がある。両見解には決定的な根拠が見出せていないことから曖昧な議論が繰り返されてきた。本研究ではこうした点を解明するために、「すりうす」の使用痕サンプルを作成し、実験考古学的な要素を取り入れながら用途と加工対象物別に使用モデルを構築する。さらに「すりうす」の加工面の肉眼観察と顕微鏡レベルにおける表面分析(以下使用痕分析と称する)を行い記録をとり(1)、「すりうす」の使用目的と食品加工の実態を明らかにする。 (1) 顕微鏡は金属顕微鏡(OLYMPUS BXFM-N38MDSP)を主として使用。写真撮影には一眼レフデジタルレンズカメラ(NY-E-510)を直接接続して撮影を行った。ただし、移動時に携行機材が相当の重量に達した場合には、大学備品である小型の金属健微譲と接続カメラを使用した。
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