Research Abstract |
日本出土の新羅土器の分布状況は,時期的,空間的に特徴的であり,特に,7世紀以降では宮都の展開と強い相関関係にある。その搬入背景には政治権力が深く介入していたものと考えられ,外交の様相を示す好資料と考える。こういった認識から,本研究では日本から出土した新羅土器の分析,検討を通して,国家の体裁が重視される外交の展開を解明し,律令国家形成過程の特質を考古学的に考察する手掛かりを得ることを目的とする。 平成19年度は関東地方と近畿地方を中心に,資料調査を行う前提となるリストの作成と所在確認とを行った。また,関東地方の資料については所蔵機関に赴いて調査を行い,器形と部位の特定,器形の特徴,成形技法,胎土の状態,焼成方法,焼成温度などに関して詳細な記録をとった。特に,新羅土器を特徴付ける印花文などの文様に関しては写真撮影と拓本をとり,施文原体の文様把握と,施文・押捺方法の確認を行った。 資料調査を実施したのは,千葉県富津市の野々問古墳,市川市の下総国分寺跡,曽谷南遺跡,須和田遺跡,国府台遺跡と,栃木県の西下谷田遺跡,前田遺跡,免の内台遺跡,落内遺跡,惣宮遺跡,郭内遺跡であり,主に以下のような成果が得られた。 1.市川市出土の甕類は7世紀後半に属する可能性が高く,製作技法や形態が韓国慶尚道のものと酷似することが確認され,生産者は新羅の工人だと判断できる。 2.栃木県の資料は,胎土や色調,焼成が多様で,複数の生産地が想定できるため,新羅から搬入された可能性が高い。
|