2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本における国立公園の風景地選定とナショナリズム・観光・自然保護の関係性
Project/Area Number |
19720224
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
神田 孝治 Wakayama University, 観光学部, 准教授 (90382019)
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Keywords | 風景 / 国立公園 / ナショナリズム / 観光 / 自然保護 |
Research Abstract |
本研究は、日本の国立公園選定において、観光・ナショナリズム・自然保護がいかに関係していたのかを考察することを目的としている。特に本年度は、こうした問題を検討ずるために、国立公園の中でも周縁的な事例を取り上げて考察するという方針を明確にして研究を行い、以下の3つの研究成果を発表した。 まず、2008年8月26日の人文地理学会・第111回歴史地理研究部会(於 : 京都大学)では、「国立公園風景の再考」と題して、戦前期の日本における国立公園の特徴とされる「山岳的な大風景」以外の国立公園に注目し、その風景の多様性について報告した。具体的には、海洋や海岸を主題とする風景地を選定した瀬戸内海国立公園と吉野熊野国立公園、そして小規模な山岳風景地を選定した台湾の国立公園について検討した。 また2008年12月14日のには、韓国・ソウルで開催されたThe 5th EAST ASIAN REGIONAL CONFERENCE IN ALTERNATIVE GEOGRAPHYにおにて、「Holy place and imaginations : A case study of Ise Shrine in Japan」と題する報告を行った。ここでは、伊勢神宮の観光地化とその想像力の変化の重要な契機として、伊勢志摩国立公園の指定があったことを議論した。この伊勢志摩国立公園は、GHQ主導のもと海岸部を含む地域を指定した戦後初の国立公園であり、戦後の国立公園指定を観光とナショナリズム、そして自然保護の関係から考えるために非常に重要な事例と考えられた。 さらに、2009年3月には「吉野熊野国立公園の指定と熊野風景の変容」と題した論文を和歌山大学観光学部設置記念論集に発表した。ここでは、戦前期における海岸を特徴とする国立公園の指定が、当時のナショナリズムや地域の観光開発といかに関係したのかを議論した。
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