2007 Fiscal Year Annual Research Report
ムスリム・コミュニティの再構築と組織原理-現代中国の地方政治の民族誌的研究
Project/Area Number |
19720233
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
澤井 充生 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 助教 (20404957)
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Keywords | 文化人類学 / 中国地域研究 / イスラーム研究 |
Research Abstract |
本研究課題では、当初の計画通り、中華人民共和国におけるムスリム・コミュニティに関する個別実証的な研究を文献研究およびフィールドワークによって実施した。今回は国家主導の経済開発が進展する中国西部(内モンゴル自治区)を調査地として選択し、ムスリム少数民族のひとつ、回族の人々が清真寺(モスク)を中心とする伝統的コミュニティをどのように再編し、外部世界の急激な変容に対処しているのか、それが国家政策に左右されるのかという問題に注目し、人類学的な調査研究による解明を試みた。 まず、調査地に関する統計資料や地方誌(おもに現地語)を収集・整理し、調査地の全体像を把握した。その後、調査地に点在する清真寺を訪問し、宗教指導者や管理委員会らにインタビュー調査をおこない、清真寺ごとの歴史的背景および現状について事実確認をおこなった。今回のフィールドワークにより、調査地にある清真寺の組織形態、清真寺間の力関係(とくに「教派」とよばれる宗派間の関係)、そうした清真寺の集合体をゆるやかに包摂する行政機関(国家権力)の諸特徴を具体的に把握することができた。西北部と比較するかぎり、調査地ではムスリム・コミュニティの「住民自治」が地方政府によってある程度は容認されている点が新しい発見だった。「同じ回族」とはいえども、少なくとも省レベルの地域によっては、国家政策のあり方、清真寺の管理運営の方法、清真寺間の力関係、民族関係が微妙に変化する点を明らかにできた点が大きな成果である。 ただし、今後の研究では、戦前・戦中の日本植民地統治期も視野に入れ、調査地におけるムスリム・コミュニティの変容を歴史的文脈のなかに位置づける必要がある。そのためには、日本国内の研究機関に所蔵されている戦前・戦中の歴史資料をより多く収集・整理し、現地でのフィールドワークに積極的に活用すべきであろう。(776字)
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