2009 Fiscal Year Annual Research Report
ムスリム・コミュニティの再構築と組織原理――現代中国の地方政治の民族誌的研究
Project/Area Number |
19720233
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
澤井 充生 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 助教 (20404957)
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Keywords | 文化人類学 / 中国地域研究 / イスラーム地域研究 |
Research Abstract |
本研究課題では、中華人民共和国におけるムスリム・コミュニティに関する個別実証的な研究を文献研究およびフィールドワークによって実施した。最終年度にあたる2009年度は国家主導の経済開発が進展する中国西部(内モンゴル自治区)を調査地として、ムスリム少数民族のひとつ、回族の人々が清真寺(モスク)を中心とする伝統的コミュニティをどのように再編し、外部世界の急激な変容に対処しているのか、それが国家政策に左右されるのかという問題に注目し、人類学的な調査研究による解明を試みた。2007年度・2008年度と同様、まず、調査地に関する統計資料や地方誌を収集し、調査地の全体像を把握するよう努めた。今回は住民の世帯に関する貴重な統計資料を収集・整理することができた。その後、調査地に点在する清真寺(約8寺)を訪問し、清真寺関係者に対してインタビュー調査をおこない、各清真寺の歴史的背景および現状を再確認した。今回のフィールドワークにおいては、清真寺の指導層だけでなく、一般信徒たちに対してもインタビュー調査や地域活動の参与観察(例えば、結婚式や葬送儀礼の観察)を実施できたことが大きな成果である。こうした調査の結果、調査地にくらす住民の家族構成や居住分布、清真寺の組織形態、清真寺間の力関係(とくに「教派」とよばれる宗派間の関係)、清真寺の集合体をゆるやかに包摂する行政機関(国家権力)の諸特徴を具体的に把握することができた。今後の課題としては、戦前・戦中の日本の植民地政策も視野に入れ、調査地におけるムスリム・コミュニティの変容を歴史的文脈のなかに位置づける必要がある。日本国内の研究機関に所蔵されている戦前・戦中の歴史資料をより多く収集・整理し、現地でのフィールドワークに積極的に活用したい。(741字)
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