2008 Fiscal Year Annual Research Report
「合掌造り」を事例とした近代における民家の価値転換に関する民俗学的研究
Project/Area Number |
19720236
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
才津 祐美子 Nagasaki University, 環境科学部, 准教授 (40412613)
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Keywords | 民俗学 / 合掌造り / 民家 / 資源化 |
Research Abstract |
本年度は、「合掌造り」民家の移築先における活用状況を中心に、調査・研究を行った。 直接現地調査に訪れたのは、日本民家集落博物館(大阪府豊中市)、川崎市立日本民家園(神奈川県川崎市)、東山動植物園(愛知県名古屋市)、飛騨の里(岐阜県高山市)、下呂温泉合掌村(岐阜県下呂市)、宮地嶽神社・民家村公苑(福岡県福津市)のような博物館およびそれに類する施設で、本調査により各施設の「合掌造り」民家が移築された経緯や現在に至る維持管理および活用の状況について把握することができた。とりわけ重要だと思われたのは、複数の施設でみられた「ボランティア組織」の役割と「本物志向(の高まり)」である。 ボランティア組織は、例えば、茅屋根を持つ民家の基本的なメンテナンス方法の一つである「囲炉裏の火を焚く」という行為を引き受けるとともに、訪れた人々に解説を行うなど、移築民家を「生きたもの」として保存および活用するための役割を担っていることがわかった5また、近年になって、屋根の葺き替えの際に移築元である白川村から屋根葺き職人を呼んだり、白川村に屋根葺きの技術を習いに行ったりしている例もあり、より「本物」に近い状態を目指す動きがあることが明らかになった。 なお、商業施設として再利用するために移築された「合掌造り」に関しては、来年度補足調査を行う予定である。 さらに、平成19年度から引き続き、本年度もまた、民家移築の背景となった近代以降の民家研究の趨勢について文献資料の収集および分析を進めた。
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