2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720237
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
大西 秀之 Research Institute for Humanity and Nature, 研究部, 上級研究員 (60414033)
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Keywords | 人類学 / 景観 / アイヌ文化 / 植民地 / 都市 |
Research Abstract |
本年度は、基礎資料・データ整備という目的の下、上川盆地・旭川市において現地調査を実施した。具体的には、まず上川アイヌの人々や社会に関連する文献史料等の掘り起こしを行うとともに、旭川市形成に関わる記録や地図・写真資料などの収集を実施した。とくに、本年度の成果としては、旭川市の形成が進むなか上川アイヌの人びとが最終的に近文の給与地に集住させられる過程で、それぞれの住居地・農地を割り振られた人びとが本来どの集落(コタン)の出身者であり、その後どのような生業活動を基盤として生計を営んだかなどに関する文献記録などを収集することができた。さらに、『新旭川市史』で新たに提起された歴史的過程の基礎情報などに当たることによって、当時の上川アイヌの人びとがおかれていた時代背景や社会状況などを把握することができた。 他方、本年度は、生計戦略に関わる地理的な空間利用の変化を明らかにすべく、近文給与地集住の前後で生業活動や「送り儀礼」の場所の分布の違いを捉えるとともに、旭川市の成立前後の集落(コタン)分布や「送り場」など生業活動に関連する民具・遺物資料の分析・検討を行った。この調査では、文献史料やインタビュー記録のみならず民具資料や考古資料を比較検討することによって、文字記録や発話資料などから導かれる言説レベルと行動・活動の痕跡として捉えられた実践レベルのあり方との異同を確認することができた。こうした成果は、単に文字記録として残されなかった上川アイヌの人びとの生計活動を復元するにとどまらず言説レベルと実践レベルのズレを窺わせるものであり、当時の上川アイヌの人びとの空間利用に関わる認知・行動様式を解明するための貴重なデータであるといえる。
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Research Products
(7 results)