2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720237
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
大西 秀之 Doshisha Women's College of Liberal Arts, 現代社会学部, 准教授 (60414033)
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Keywords | 人類学 / 景観 / アイヌ文化 / 植民地 / 都市 |
Research Abstract |
本年度は、まず旭川市の都市形成が進むなかで変容/喪失した上川アイヌの人々の生活環境の把握を試みるという目的の下、地図や写真など過去の映像資料を基に市街地が完成するまでの景観の変遷の復元を実施した。また、この検討を基に現地調査を行うことによって、現在の市街地の形成に至る自然地理的な状況を踏まえるとともに、それぞれの場所がどのような役割の区画地域として市街化されていったかを明らかにすることができた。とくに、今回の調査では、近文給与地を中心とするアイヌの人々に割り振られた宅地や農地などが、日常生活の場としては比較的条件の悪い河川扇状地の氾濫原に位置する河岸段丘第一面であることが確認できた。こうした成果は、通常の文献史料や民族誌資料などといった文字記録や発話情報からは窺うことのできない上川アイヌの人々に対して実施された観農政策の背景であり、本研究が目的とする言説レベルと実践レベルのズレを明らかにする上で非常に重要な意義を孕むものと位置づけることができる。他方、本年度は、上川盆地のとの比較を目的として根釧地域の現地調査を実施し、過去の民具資料の理解や民族誌記録の儀礼を読み解く参考とするため、現在行われている儀礼的実践の場におけるイナウの観察を試みた。この調査では、クナシリ・メナシの戦いで犠牲になったアイヌの人々に対する鎮魂として施されたイナウを根室・厚岸・屈斜路の三地域で比較検討することができた。さらに、本年度は、アイヌ関連の収蔵資料と展示法の調査を目的として、オーストリアとスイスにおける三つの民族学博物館を訪問した。この内、ウィーンとバーゼルの民族学博物館は大規模な修復中であったため展示を見ることができなかったが、すべての博物館における資料の現状に関する聞き取りを実施した。
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Research Products
(6 results)