2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19720237
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
大西 秀之 Doshisha Women's College of Liberal Arts, 現代社会学部, 准教授 (60414033)
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Keywords | 人類学 / 景観 / アイヌ文化 / 植民地 / 都市 |
Research Abstract |
最終年度となる平成21(2009)年度は、本研究の総括となる二つの研究成果を提示することができた。まず、過去の文献資料や民族誌資料の検討をとして、近世期末から明治期にかけての上川アイヌ社会における社会組織、集団構成、生計戦略などの変容を明らかにした上で、そうした変容の直接的・間接的原因となった殖民政策を始めとする政治社会的背景を究明した。次に、上川盆地における「送り儀礼」の詳細な検討を行った結果、殖民地政策による開発・入植が急速に進み「旭川」の市街化形成が開始される明治20年代を契機として、同地域の「送り儀礼」に顕著な変容が認められることを明らかにするとともに、そうした変容の背景にある同地域に暮らしていた上川アイヌの人びとの日々の生活実践に殖民政策・開発が及ぼした影響を読み解いた。上記の二つの研究成果は、近世宋期から明治期までのアイヌ社会の変容を、特定地域における日常の生活実践として具体的に描出したものであり、また歴史学や考古学など人類学以外の領域の研究成果を参照・統合することによって得られたものでもあることから、本研究の主要な目的を達成することができたと認識している。くわえて、本研究は、旭川市街周辺の上川盆地に限定されるものであるが、同時期を対象とした既存のアイヌ研究の多くが必ずしも十分に検討してこなかった幕藩体制や明治政府が施行した諸政策・制度に対するアイヌ社会側の対応を部分的にでも明らかにした意義は決して小さくはないだろう。他方、本研究では、海外の博物館に収蔵されているアイヌ民具コレクションの資料調査を行い、特にヨーロッパの4博物館では資料全点を確認することができた。同様な試みは、過去にも様々な研究機関・グループによって組織的に実施されてはいるが、1990年代以降ヨーロッパでは博物館・研究機関の統廃合が進み状況が急変していることから、過去の調査結果の補完・修正のみならず、今後の資料調査を実施する上でも有用な基礎データを得ることができた。
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Research Products
(4 results)