2009 Fiscal Year Annual Research Report
水害要因による北海道移住者の河川とのつきあい方を伝えた伝承について
Project/Area Number |
19720240
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
池田 貴夫 History Museum of Hokkaido, 学芸部, 研究員 (30300841)
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Keywords | 民俗 / 北海道 / 移住 / 川 / 環境 / 自然災害 / 水害 / 減災 |
Research Abstract |
本研究は、明治期の本州以南において、水害により人的、経済的、物質的、精神的被害を受けたことを要因として北海道に移住した地域集団が、防災・減災という見地から新天地の生活環境にどのように対処し、河川と調和した地域文化づくりをいかに実践してきたのか、地域を限定して、それらを伝えた諸伝承の存在と意義を明らかにすることを第一義的な目的としている。平成21年度は、以下の活動を行った。 (1)奈良県十津川村団体が、新十津川村において石狩川沿いの河跡湖に囲まれた場所に玉置神社を創建した現象を理解するため、その様子を描いた「玉置神社奉祀之景」絵馬(新十津川町開拓記念館所蔵、町指定有形文化財)の解釈を行い、当時の十津川団体の心性や河川とのつきあい方について考察をおよぼし、日本民俗学会第61回年会において口頭発表した。その会場で、絵馬に描かれた当時の玉置神社のあり方が和歌山県熊野本宮大斎原と似ていることから、その比較を急いだ方が良いとの教示をいただいたことを受け、熊野本宮の調査を行い、新十津川村玉置神社の立地の背景について、さらに考察を加えた。 (2)奥尻島(稲作の行われる日本最北端の離島)の米岡地区における水田(川のない台地に水路で水を引き開いた水田)稲作の民俗学的意義を明らかにするため、5月に行われる水路清掃行事の参与観察をおこなった。また、米岡地区で収穫される米の質が奥尻島民の意識の中で低く評価されていることから、それが風評であるかどうかを確かめるために、米岡米の化学分析と食味評価分析を行った。 以上の活動に基づき、課題(1)については、既発表論文の考察の幅をさらに広げることができたことから、加筆修正のうえ新たに発表する機会を作り、また、課題(2)については、重要な民俗学的意義をもつ存在として位置づけられる段階に至ったことから、『日本民俗学』等の学術雑誌に投稿すべきものと考える。
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