2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の未成年者に対する刑事法の理念と実態-刑法制定後の議論を中心として-
Project/Area Number |
19730003
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
田中 亜紀子 Mie University, 人文学部, 准教授 (90437096)
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Keywords | 未成年者処遇 / 大正少年法 / 刑事法史 |
Research Abstract |
現行刑法制定後の未成年犯罪者処遇問題に関する課題研究の初年度である平成19年度は、研究計画に基づき、主として当該問題に関する先行研究分析と資料収集に従事した。 具体的には、第1に現行刑法が制定されてから旧少年法が制定されるに至る1907年から1922年の間において、現行刑法制定の意義、旧刑法との相違、そして旧少年法制定と密接な関係を有する刑法第41条に関する国立国会図書館所蔵文書から閲覧および複写に着手し、本年度は刑法制定前後の資料に関する作業を完了させた。該当期における刑事法資料は300冊を超えるため、次年度も本作業を係属し、当該資料の分析を通じて未成年犯罪者処遇および旧少年法に対する現行刑法制定の影響を明らかにする必要がある。第2に、近代日本の未成年犯罪者処遇に影響を及ぼした英米の同制度に関する文献収集に着手した。収集した文献の内、特にJuvenile Justice in the Making (David S.Tanenhaus, Oxford Univ Pr, 2004)については、当時の未成年犯罪者処遇を理解するための重要な文献であると考えられることから、現在その検討に着手している。第3に、平沼麒一郎文書における「不良少年二関スル法律案」に関する審議を分析し、研究会において「大正期における刑事法と社会事業の関わりについて」の題で報告を行った(本報告に関する論文は次年度中に公表予定)。当該審議は、刑事訴訟法改正審議から少年問題に関する審議が分離され、旧少年法制定が目指される契機となった審議であり、当時の司法省における未成年犯罪者処遇のヴィジョンを明らかにする上で重要なものであった。本報告に対しては、新派刑法学の影響、内務省の感化救済事業および社会事業との関係なども視野に入れるべき等の指摘を受け、次年度以降の課題として取り入れる予定である。
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