2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730004
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大森 秀臣 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (10362948)
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Keywords | 自由論 / リベラリズム / 共和主義 / 公民的徳性 / デモクラシー / バーリン |
Research Abstract |
本概究は、共和主義の法理念を現代において再構成することを目的とするが、本年度はこの4年間にわたる研究の初年度にあたり、今後の研究の準備作業であると共に、その主軸を形成するものと位置づけられる。本年度が研究対象にした法理念は、「自由」の観念である。「自由」の観念は、共和主義の思想において最も大きな位置を占めるとされており、本年度以降、徳や平等や国制などの他の共和主義の理念について考察を広げる際に、自由の考察はその基軸となる。 本年度は、具体的には、フランスの共和主義者、とりわけジャン=ファビアン・スピッツの la liberte politique(PUF,1995)を対象にして、共和主義の自由が、現代の支配的な公共哲学として受け入れられている、リベラリズムが奉じる自由とどのような点で異なるのか、そしてスピッツの自由論が、従来の自由をめぐる論争に対して何を提起することができるのかを検討した。この研究は、岡山大学法学会雑誌第五七巻第一号にて論文「バーリンの呪縛を超えて-ジャン=ファビアン・スピッツにおける自由の概念」として公刊された。 この研究の成果は、来年度以降の本研究の基軸となるばかりではない。それは、現在法哲学・政治思想の分野で活発に論議されている共和主義研究の中で、今まで十分に扱われてこなかった仏語圏の共和主義自由論を取り扱っており、J. ポコックの影響の下、やや英米圏の文献に偏りつつある現在の共和主義研究に稗益するであろう。またそれは、共和主義の自由論を新たな自由構想の可能性を開くものと評している点で、バーリンの枠組みに強く囚われてきた自由論に対しても多くの示唆を与えるものと期待される。
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