2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730004
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大森 秀臣 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (10362948)
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Keywords | 共和主義 / マキァヴェッリ / ヴィロリ / ミニマリズム / サンスティーン |
Research Abstract |
本研究は4年計画で実施され、本年度はその二年目にあたるが、いわば昨年度の研究を軸にして、その発展と深化をはかるものと位置づけられる。本研究は、「共和主義」が支持する自由や自己統治などの法理念が現代社会の文脈に適合的であるか、適合的であるためにはどのように再構築すればよいかを検討することを大きな目的としている。 本年度は、上記の目的を達成するため主に二つの作業を行った。ひとつは、現代共和主義の主張者のうち、マウリツィオ・ヴィロリ(Maurizio Viroli)の諸著作を対象にして、彼が主張する公民的徳性の観念の現代的妥当性を検討した。とりわけ彼のマキァヴェッリに関する思想研究に焦点を当てて、彼が徳(virtu)の概念をどのように再定式化しているかを宗教と軍事の側面から整理した。この研究は、岡山大学法学会雑誌第五八巻第一号(二〇〇八年、九月)「マキァヴェッリは背徳の徒に微笑むか? -マウリツィオ・ヴィロリにおける徳の概念について(一)」という論文として公刊された。 もうひとつは、この作業とも平行して、もう一人の現代共和主義の憲法理論家であるキャス・サンスティン(Cass R. Sustein)の司法ミニマリズムを対象にして、彼の法的思考論が共和主義の理論とどれだけ整合的であるかをも検討した。この研究は、第9回IVR神戸レクチャー名古屋セミナーへのパネラー出席の際に、コメント'Can minimalism make the judiciary and the legislature cooperate?' としてサンスティン本人との直接の議論の応酬がなされ、近くARSPにて公表される予定である。 これらの研究は、来年度以降の研究の基盤となると共に、今まで英米圏を中心に進展してきた日本における共和主義の研究に対して、発祥地イタリアの共和主義にまで視野を広げさせる一方、政治思想に偏重していた共和主義研究を、法解釈理論に接合する可能性を開くものであると考えられる。
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