2007 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育紛争処理システムの構築に向けた法社会学的研究
Project/Area Number |
19730005
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
土屋 明広 Iwate University, 教育学部, 准教授 (50363304)
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Keywords | 学校 / 紛争 / ADR / 公共化 / 私化 / 保護者 / 地域住民 / 訴訟 |
Research Abstract |
本年度は新たな学校教育紛争処理制度として注目を集めている学校ADRの聞取調査に基づいてデータを収集・分析し、あわせて文献調査によって近年の学校にて多発する紛争の背景要因と学校における処理方法のマニュアル化に関する考察を行い、その結果を学会にて報告し、さらに公表論文としてまとめた。ADRは裁判の弊害を克服するものと期待されているが、その制度設計が紛争当事者にとってより適切なものとなるためには、紛争の発生要因を明らかにすることが必要である。このような観点から学校にて生じるトラブルを考察した結果、学校は現在個人的な利益主張の場と変容しつつある(=「私化」)と考えられるに至った。しかし、このような「私化」とその処理の場である学校ADRはこれまでの学校職員と生徒・保護者らとの優劣関係を打開し、学校を討議空間へと転換(=「公共化」)させる可能性を持つものであると論じた。だがその一方で、既存の学校ADRや紛争対応マニュアルの現場における定着は、個人的利益主張をシステマティックに処理することとなり、当事者の意思を疎外させる学校職員主導の場へと学校を再び固定化させる可能性があることを指摘した。 次年度に向けた課題は次の通りである。第一に、本年度調査し得た学校ADRは一機関のみであったため、次年度においては、より多くの機関の調査を行い、データを蓄積する。第二に、国内文献並びに海外文献のより一層の収集を行い、学校教育紛争に対する様々な取り組みについての国境横断的な考察を行う。第三に、本年度と同様に諸種の学会・研究会に参加し、他分野の研究者・実務家と交流を図ることで、多角的な視野から研究を進めて行く。
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Research Products
(2 results)