2009 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育紛争処理システムの構築に向けた法社会学的研究
Project/Area Number |
19730005
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
土屋 明広 Iwate University, 教育学部, 准教授 (50363304)
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Keywords | 学校 / 紛争 / ADR / 公共化 / 私化 / 保護者 / 地域住民 / 訴訟 |
Research Abstract |
本年度は本研究の最終年度であるため、昨年度ならびに一昨年度の総括とともに理論的探究を行った。さらに、以上を踏まえた上で紛争処理システム構築に向けた新たな課題として学校現場の変容、特に教師と保護者との関係性の変容の理解とそれに連動していると思われる教育制度の変革に関する理解をはかった。これまでの研究のまとめにおいては二年間で収集したデータと文献研究によって得た知見を整理した。その結果、近年の自治体レベルにおける教育ADRは、その多くを保護者への対応を念頭にしたリスクマネジメントを目標としたものであることが判明した。また、海外と日本における諸分野で展開されているADR論の大部分が、メディエーション論を中心としたものであるのに対して、日本の教育分野におけるADR論は数少ない例外を除いて、教育現場の要望に対応したかたちでのクレイム処理方法や制度を論じたものになっていると暫定的であるが結論づけることができた。そのため、紛争処理システムの構築に際しては、これまでの教育紛争処理論に加えて教育現場におけるクレイム頻出の社会的背景を考察する必要性が生じることとなった。前年度までの研究において社会的背景として考えられる学校空間の「私化」を、学校教育に対する保護者の意識変容として考察した。そのため、本年度の研究では「私化」をもたらす別の背景要因として教育改革をとりあげて検討した。特に、学校選択制や保護者の学校運営参加制度の整備とそれを後押しする学校の自己評価システムの普及が保護者の学校に対する忌避感を掘り崩しているのでないかとの仮説を立て、その結果を法社会学会九州研究支部研究会で報告した。
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Research Products
(1 results)