2008 Fiscal Year Annual Research Report
死別の悲しみを伴う事件・事故に起因する民事訴訟事例の実証的研究
Project/Area Number |
19730006
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小佐井 良太 Ehime University, 法文学部, 准教授 (20432841)
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Keywords | 法社会学 / 民事訴訟 / 損害賠償 / 定期金賠償 / 紛争 / 死則の悲しみ / 被害者遺族 / 調査研究 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度として、前年度に行った調査研究の成果を踏まえ、一方で、学会発表等による研究成果の公表を行うなど研究成果の社会への還元に努め、他方で調査研究をさらに継続させることで研究成果の拡大・研究内容の深化に努め、一定の成果を得た。具体的には、「死別の悲しみ」を伴う紛争事例の解決に際して法が果たすべき役割について、調査研究の成果を踏まえて法社会学の視点から法解釈学ないし法実務に対する理論的な問題提起及び実践的な提言を行った。すなわち、人命の喪失に対する損害賠償を通じた「被害救済」が求められる民事の損害賠償請求訴訟において、訴訟の原告当事者である被害者遺族が定期金賠償(命日払い)方式による損害賠償の支払いを求める際の動機・理由や訴訟に対する意味づけの具体的解明を通して、当事者が法に対して求める「被害救済」のあり方と、法解釈学ないし法実務が前提とし想定する当事者の「被害救済」ニーズとの間に大きな「隔たり・ズレ」が存在することを明らかにすることができた。これまでの法解釈理論並びに判例理論上は、死亡損害事例において定期金賠償方式に基づく損害賠償の支払い(命日払い)は認めるべきではないとする否定論に立つ見解が主流であったが、本研究の成果によれば、そうした否定的見解の依拠する理論的根拠の妥当性はかなりの程度失われることが具体的に明らかとなった。本研究のこうした研究成果は、法解釈論ないし判例実務上の具体的な問題に対して法社会学の視点から理論・実践の両面で独自の知見・提言を提供し、かつ、議論の喚起をなし得ている点で重要な意義を有する。 なお、当初予定していた学校死亡事故をめぐる民事訴訟事例の調査・検討は、上述の定期金賠償に関する研究に予想以上の進展を見たため、計画を変更し、研究成果の集中・深化を考慮してその取り組みを見合わせた。
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Research Products
(1 results)