2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730007
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
山本 弘 星薬科大学, 薬学部, 講師 (80363307)
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Keywords | 日本法制史 / 日本中世 / 訴訟制度 / 濫訴 / 堺相論 / 土地境界紛争 / 裁許前誓約 / 堺打越 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本中世における紛争解決過程において、裁判権力が「濫訴」として排除していた訴訟事例について実証的かつ多角的な検討を加え、当該期の裁判権力および社会の特徴を明らかにすることである。平成22年度の到達目標は、「日本中世の紛争処理における「濫訴」の定位」であった。本年度は本研究の最終年度にあたり、これまでの各研究段階で得られた結果をもとに、「濫訴」の処理過程について考察を行った。以下、本年度における具体的な成果を述べる。 1,本研究の検討結果 (A.法制定段階)(1)鎌倉幕府は「濫訴」の悪質度を考慮しながら対応する制裁措置を用意していた。(2)訴訟進行の各段階で「濫訴」排除の法整備がなされており、時代とともにより早い段階での濫訴排除志向が強まっていく。(B.運用段階)(3)謀書謀略のような悪質性の高い「濫訴」については実際に制裁措置を加えていた。(4)しかし、「濫訴」と判断されたほとんどの事例は「濫訴」者敗訴のみで積極的に制裁を加えていない。:総じて、法制定段階では複数の手段を講じて威嚇効果的に「濫訴」防止を企図しながらも、運用段階ではごく一部の悪質性の高い具体的な「濫訴」を除き積極的な制裁を科すに至っていない、といえよう。本研究はこれまでの中世法・中世裁判権力研究の成果をトレースし補強したものと位置づけられるが、「濫訴」を介した研究の深化はまだまだ可能であると考える。また、検討対象が鎌倉幕府裁判に終始しており、室町期をほとんど対象とできなかった。反省すべき点であり今後の課題としたい。 2,史資料の整理 史資料の収集はほぼ完遂できたが、時間的制約から史料のデータベース化は未完である。研究期間終了後も鋭意作成していきたい。 3,研究者との交流 多方面からの助言が得られ、知見が拡がった。 4,論文の公表 『史学論叢(別府大学)」40号で一応の成果を公表できた。
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