2007 Fiscal Year Annual Research Report
米国陪審制度の基礎的研究-国内における陪審論の系譜と外国法研究の展望
Project/Area Number |
19730010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
勝田 卓也 Osaka City University, 大学院・法学研究科, 准教授 (20298095)
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Keywords | 陪審 / 司法制度改革 / アメリカ法研究 |
Research Abstract |
平成19年度には,(1)アメリカにおける陪審審理を受ける権利をめぐる最近の最高裁判例を整理すると共に,(2)日本におけるアメリカ陪審制度をめぐる研究状況と司法制度改革審議会における議論の状況についてとりまとめるための作業を進めた。さらに,(3)アメリカにおける陪審制度を世界的な視点から相対化するための準備作業を行った。 米国最高裁は一連の判決において,陪審が認定しなかった事実に基づく刑の重罰化について,合衆国憲法の保障する陪審審理を受ける権利を侵害するかどうかの判断を行った。これらの判決において最高裁はすべて5対4の僅差で,侵害するという結論に達した。これら判決の論理を詳細に分析することによって,最高裁が単純に原意主義的な立場から現代的な制度を切り捨てているわけではないことを明らかにした。研究成果は下記の研究ノートとして公表することができた。 日本におけるアメリカ陪審研究については,80年代以降のアメリカ陪審を主題とする本格的な研究を整理し,司法制度改革審議会においてアメリカ陪審制度がどのように扱われたのかを検討しつつある。日本におけるアメリカ陪審研究の成果は相当程度に審議会において理解されていたが,審議会はアメリカ的な特殊事情を強調することによってアメリカ型の陪審導入論を拒否し,裁判員制度の導入を決めた。審議会におけるアメリカ陪審に関する議論をほぼ網羅的に紹介し,審議会がアメリカ陪審をどのように扱ったのかを分析する論考の骨格が完成しており,論説として連載が開始される予定である。 アメリカ陪審の特殊性が強調される日本では,むしろアメリカ以外のコモン・ロー諸国の陪審制度を視野に入れることによってアメリカ例外論の弊害を免れることができる。アメリカの陪審が本国による専制支配から植民地人の自由を護ったことが強調されるが,逆にそのイギリスでも陪審審理は長く行われている。アメリカほどに権力による専制支配が恐れられていない社会で陪審がどのように展開し,議論されていったのか。イギリスでの調査によってこうした問題への手がかりをつかんだ。
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