2008 Fiscal Year Annual Research Report
米国陪審制度の基礎的研究-国内における陪審論の系譜と外国法研究の展望
Project/Area Number |
19730010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
勝田 卓也 Osaka City University, 大学院・法学研究科, 准教授 (20298095)
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Keywords | 陪審 / アメリカ法 / 司法制度改革 |
Research Abstract |
平成20年度には、日本におけるアメリカ陪審研究の系譜を踏まえた上で、それらが司法制度改革という実践的な場面においてどのように用いられたのかを、次の通り明らかにした。 第1に、アメリカ陪審研究そのものについては、アメリカの陪審制度の全体像を理解しようという優れた研究が少なからず公表されてきたことが確認される。第2に、こうした研究成果が、日本の法改革という実践的場面において一定のインパクトを及ぼした。アメリカの陪審制度についての骨太の知見は、司法制度改革審議会という最も実践的な場面において参照され、議論の基礎となった。第3に、審議会のような実践的な場面においては、基礎的な研究が相当程度に参照されてはいるが、そうした研究の細かなニュアンスが必ずしも十分に理解されるわけではなく、むしろ標語的な言葉を、自らの政策的な主張に適うよう便宜的な形で利用するケースが見られた。このことと関連して、日本における法改革という実践的な目的のためにアメリカ法を研究する場合でも、アメリカ法の特殊性を過度に強調することはその目的を損なう危険を伴うことが指摘できよう。第4に、外国法研究を行うに当たって、外国法の特殊性を過度に強調することは、上記第3点に関わる問題点を生じさせる。一般論に外国法を研究する場合には日本法と外国法の相違を探り、相違の原因を追究しようとする傾向がある。しかし、相違の原因を探る学問的な営みはそれ自体高い価値を有するにせよ、その成果が利用される現実の政策判断の場面では、相違の原因は、特殊性を強調し普遍性を否定するために、容易に転化されうる。 今後のアメリカ陪審制度研究について、日本への一定の影響を踏まえつつ研究を行う場合には、アメリカの陪審制度の特殊性を強調し過ぎることに慎重になりつつ、相対化するという方法によってこれを遂行することが望まれる。
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Research Products
(2 results)