2008 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代刑事法の成立と法学教育-18世紀末から19世紀前半を中心に-
Project/Area Number |
19730013
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 直人 Ritsumeikan University, 法学部, 准教授 (50368015)
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Keywords | 基礎法学 / 刑事法学 / 西洋法史 / ドイツ刑事法史 / 近代刑事法 / 法学教育 / 高等教育 / 大学史 |
Research Abstract |
ドイツ近代刑事法の成立・発展の過程を18世紀末から19世紀前半のドイツ諸大学における教育のあり方と関連づけつつ理解することが、本研究の目的である。この目的を達成するために必要な史料の収集を昨年度に引き続いて進めるとともに、研究成果を発表していかくことが今年度の課題であった。今年度に得られた成果は以下の通りであり、すでに学会発表を通じて公にしている。第一に、18世紀末から19世紀前半のドイツにおいて刑事法学が法学上の固有の専門分野として確立されていく中で、刑事法学が大学での講義科目としても確立され豊富化されていく過程を、当時の諸大学のカリキュラムを具体的にふまえて明らかにした。第二に、刑事法学とこれに隣接するいわゆる「補助学」(哲学・歴史学・医学・心理学等)との影響関係が当時の大学のカリキュラムの中にどのように見いだされるかという点について、特に精神医学および心理学と刑事法学との影響関係を中心に一定の解明を行うことができた。具体的には、19世紀の刑事法上の重要問題である帰責論にかかわって、いわゆる行為者の「意思の自由」をいかに判断するかという法学および法実務上の課題を精神医学・心理学上の知見と結びつけて論ずる授業が、当時の法学部や医学部において実際に行われている、ということを史料に依拠して明らかにした。第三に、当時の法学教育における理論と実践との関わりを考える上で重要な演習形式の授業のあり方について、先行研究の成果をふまえつつ、そこに欠けていた刑事法分野の演習の発展という点についても一定の解明を行った。以上の成果は、一方ではドイツ近代刑事法史の研究を法学教育史・大学史との関わりという従来の国内外の刑事法史研究には乏しかった切り口から深化させるものであり、他方で現在の日本の法学部および法科大学院の教育のより良いあり方を考える際にも、歴史的観点から一定の素材を提供しうるものである。
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