2008 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカの「表現の自由」論は、フェミニストの批判に如何に対応するか。
Project/Area Number |
19730016
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田代 亜紀 Gunma University, 社会情報学部, 講師 (20447270)
|
Keywords | 表現の自由 / アメリカ / フェミニズム / ポルノグラフィ / リベラリズム / 第一修正解釈 |
Research Abstract |
本研究課題は, アメリカの「表現の自由」理論は, フェミニストからの批判に如何に応えるかというものであり, 具体的には, ポルノグラフィをめぐる憲法解釈としてフェミニストの主張をいかに取り入れるべきかについて検討した。伝統的な「表現の自由」論においては, 自由な表現が個人にとって又は社会にとって非常に重要であることから, ポルノグラフィ規制や表現規制に対しては消極的である。そうした議論に, ポルノグラフィは「表現」ではなく性差別的行為であり, 女性の平等権を侵害すると批判したのがラディカル・フェミニズムと称されるキャザリン・マッキノンの議論であった。この議論を契機に, ポルノグラフィは憲法上議論されることになったが, この主張をどのように受け止めるか, すなわち統的な表現の自由論との理論的断絶を如何に克服するかが本研究の問題関心であった。マッキノンはポルノグラフィによる深刻な被害を訴え, その議論には一定の説得力が認められ, アメリカ憲法第一修正解釈に揺らぎをもたらした。本研究課題では, その揺らぎが生んだ, 従来の表現の自由論を前提にしつつもフェミニズムの議論に理解を示す第一修正解釈を検討することで, 伝統的な表現の自由理論とフェミニズムの対話可能性を探り, 対話するための理論的前提条件を提示した。同時にフェミニストの議論も一枚岩ではなく, 多様に存在する。そのうち, 特にポストモダン・フェミニズムの議論を参照し, フェミニズム側から伝統的な表現の自由理論にアプローチする議論を検討した。このような研究から, 課題である伝統的な表現の自由理論がフェミニズムの批判に如何に対応するかについて試論をまとめた。また, フェミニズム法理論は, アメリカの伝統的な表現の自由理論を揺るがすほどのダイナミズム・影響力を内包しているが, 同時にフェミニズム法理論内部のジレンマも存在し, その解消という困難な理論的課題も求められていることも結論の一つとした。
|