2008 Fiscal Year Annual Research Report
憲法解釈学における国家理論の役割とその変容-ドイツ憲法学史を題材に
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19730017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 知更 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30292816)
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Keywords | 憲法 / 国家 / ドイツ |
Research Abstract |
平成20年度は、諸々の事情のため、年度内に公刊された成果は少ないが、翌年度以降に公表される予定のものを含めると、主に以下の研究を行った。第一に、憲法解釈論上の具体的問題領域として、外交作用に対する国会統制について、権力分立論および執政権論もしくは国家指導行為論との関係に留意しながら学説史研究を行い、その概要を公表した。第二に、憲法における議会の位置づけの発展について論文を執筆した。第三に、憲法の総論領域における「国家」概念の役割の後退と、「憲法」および「立憲主義」の意義増大という傾向の持つ意味について考察する論文を執筆した。第二、第三の論文は、平成21年度に公表される予定である。第四に、1960年代以降のドイツ憲法学の展開の持つ意味について、その最も重要な論者の一人であるベッケンフェルデを取り上げて分析する論文の執筆に年度末に取り組んだ。これは、平成21年度初めに完成された上で直ちに公表される予定である。第五に、本研究と他の共同研究とにまたがるテーマとして、カイザーライヒ期からワイマール共和国にかけてのドイツ連邦国家論についての研究に着手し、その中間的な成果を、札幌と東京の二度の研究会で発表した。第六に、次年度以降の研究への準備作業として、カイザーライヒ期のドイツ実証主義国法学の古典学説を批判・相対化しようとする隣国の憲法学の研究を進めた。具体的には、フランス第三共和政期憲法学の主要論者の一人としてまずはカレ・ド・マルベールを、またウィーン学派の創始者であるケルゼンを検討した。
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