2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730022
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
奥谷 健 Shimane University, 法文学部, 准教授 (70335545)
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Keywords | 所得税法 / 応能負担原則 / 主観的担税力 / 所得控除 / 医療費控除 / 課税の上限 |
Research Abstract |
本研究の成果として公表した、「課税の負担と上限-ドイツ連邦憲法裁判所2006年1月18日決定を手がかりとして」(税法学558号)では、検討したのは次の点である。現在の税法は、応能負担原則に基づき課税をしなければならないことは憲法上要請されている。それによれば、納税者の財産権が保障された上に課税されなければならない。そこで、財産権との関係で課税の限界が考えられなければならなくなる。しかし、現在日本においてはそのような議論はほとんどないため、ドイツの憲法裁判所決定とそれに関する議論をもとに、この点を検討し、ドイツにおける応能負担原則に関する議論の一端をまとめ、日本法における課税の上限の議論の重要性を指摘した。 また、所得税法は、応能負担原則の観点から納税者の個人的事情を課税段階で考慮しなければならない。そのための制度の1つとして、医療費控除が挙げられる。この医療費控除は、本来の法令上はその対象範囲が限定的に規定され、それが通達を通じ拡大されてきている。しかし、その通達に依拠した取扱いのために、必ずしも充分な・公平な対応がなされていないと考えられる場面もある。そのような場合には、主観的担税力を十分に考慮しているとはいえないため、実際に問題となった事例をもとに、その取扱いの不合理性を論じた。このように、日本法における具体的問題の検討を通じ、主観的純額主義の妥当性を検討した。 このように、今年度は応能負担原則に関するドイツの新たな議論と、主観的純額主義に関する日本法における具体的問題を検討した。現在は、これらを結びつけるために、ドイツにおける主観的純額主義と応能負担原則の議論について、調査・検討を進めている。
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