2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730022
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
奥谷 健 Shimane University, 法文学部, 准教授 (70335545)
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Keywords | 所得税法 / 応能負担原則 / 主観的担税力 / 所得控除 / 医療費控除 |
Research Abstract |
本年度は、現在まで進めてきた市場所得説と人的控除の関係についての研究をもとに、ドイツにおける応能負担原則、とりわけ主観的担税力をめぐる議論について検討してきた。特に、人的控除に関する前年度までの研究成果を踏まえ、より根本的な所得税法における応能負担原則をめぐる議論について検討してきた。この応能負担原則、とりわけ主観的担税力については、連邦憲法裁判所判決の判決だけでなく、今年度はその対象を連邦財政裁判所判決に広げ、ドイツの判例理論上、応能負担原則、主観的担税力がどのようにとらえられているか、という点について研究を進めてきた。また、ドイツの税制改革において、主観的担税力を基づき、どのような改正が計画されているか、という点についても調査した。このように、20年度も引き続きドイツにおける議論を調査、整理することに重点を置き研究を進めてきた。そして、学説については、主観的担税力と客観的担税力をどのように区分してとらえているか、という点についても研究を進め、それに関する分析を現在行っている。 他方で我が国の所得税に関しては、昨年度の研究成果である医療費控除を巡る事例について、さらに研究を進めてきた。そのなかで、いまだ我が国においては、担税力を主観的なものと客観的なものとに区分して明確にとらえていないことが明らかになってきている。そこで、我が国の応能負担原則を巡る議論を整理し、ドイツにおける二元的な担税力の構成の妥当性を検討するための調査・研究を進めている。 このように、今年度は応能負担原則に関するドイツのこれまでの議論と、主観的純額主義に関する日本法における具体的問題を検討し、次につながる問題意識を確立した。現在は、この問題意識に至る過程の調査・研究の成果をまとめる作業を継続している。
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