2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730025
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
奈須 祐治 Saga University, 経済学部, 准教授 (40399233)
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Keywords | 差別的言論 / ヘイト・スピーチ / 言論の自由 / 表現の自由 / 英連邦諸国 / 平等 / マイノリティ / 違憲審査基準 |
Research Abstract |
本年度、イギリスとカナダの法制度、判例、学説を研究する予定であったが、ほぼ計画通り研究を遂行することができた。イギリスについては、新たに制定された宗教的憎悪煽動規制法の内容を吟味し、それをめぐるメディア、学界での議論を検討した。カナダについては、刑法、各州人権法における憎悪言論規制条項を検討し、それに関わる判例と学説を検討した。カナダ法については背景的知識が不十分であったため、カナダ法研究者とコンタクトをとり、資料収集の方法等についてご教示していただいた。併せて、本研究テーマに係るアメリカ法についての新たな論文、著書も発表されたので、主要なものを収集し、検討を加えた。これまでの研究で明らかになったことは、「アメリカ=憎悪言論に寛大な特殊な国」vs.「欧州、英連邦諸国=憎悪言論を規制する普通の国」という図式化はこれまで考えられていたほど自明ではなく、特に各国の違憲審査基準の中身を精査して、普遍的要素と特殊アメリカ的要素を再整理する必要があるということである。憎悪言論規制については、規制積極論か消極論かという二項対立的に議論されることが多かったが、アメリカ以外の諸国の法を検討することを通じて、憎悪言論規制という問題が複雑であり、そのような単純化は不適切であることも、本研究を通じて明らかにされると思われる(これは諸国の法制度の違いに加えて、「マイノリティ」概念の多義性、曖昧性による)。また、これまでは、表現の自由の違憲審査基準論の研究材料として、アメリカ法が参照されることが多かったが、本研究を通して、その手法自体に反省を迫るべきであることを明らかにしていきたい。成果は来年度のオーストラリア、インド、南アフリカの研究を完成させてから、併せて公表したい。
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