2007 Fiscal Year Annual Research Report
行政主体内部における機関間紛争の司法的解決についての研究
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19730028
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
門脇 雄貴 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (50438115)
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Keywords | 国家法人説 / 機関訴訟 / ドイツ国法学 / アルプレヒト |
Research Abstract |
平成19年度においては、19世紀のドイツ国法学説における、国家法人説の学説史研究に力をおいた。すなわち、従来、今日の日本においても暗黙の前提として受容されている国家法人説は、それを提唱した論者の意図にかかわらず、一様のものとしてに考えられてきた。しかし、本年度の研究において、アルプレヒト、ゲルバー、ラーバント、イェリネックといった国法学者の著作を丹念に分析した結果、19世紀のドイツ国法学における国家法人説が実際には必ずしも一枚岩ではなく、国家を法人として観念することの意義・目的が論者によって区々に異なっていることが明らかになった。 本年度の研究成果の意義は、以下の点にある。すなわち、本研究課題は、行政主体内部の機関間紛争の司法的解決すなわち機関訴訟をその検討対象としているところ、国家が法人だとされる一方、機関には法人格がないのが当然だとされる結果として、機関訴訟は「法律上の争訟」ではないという結論が導かれることがある。しかし、国家に法人格があり、機関に法人格がないという理解が、直ちに機関訴訟を排除することに直結するかどうかは、論者がいかなる意図の下に国家法人説を採用したかに左右されるはすである。従って、機関訴訟論の検討の前提として、国家法人説の意義が多元的であるという点を明らかにしたところに、本年度の研究の意義・重要性が見出される。
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