2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代行政国家における委任立法統制に向けた比較制度論
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19730031
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
田中 祥貴 Nagano University, 社会福祉学部, 准教授 (20398548)
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Keywords | 委任立法 / 英国議会 / 行政統制 / 制定法的文書 / 立法過程 / 議会制民主主義 / 行政国家 / ヘンリ8世条項 |
Research Abstract |
本研究は、委任立法の制定過程において、立法権と行政権の関係を従前の学説・判例の如く相互排他的に捉えるのではなく、現代行政国家の下で両者の関係を有機的・動態的に捉え直して、相互の権限共を前提としつつ、議会による委任立法への監督・統制能を強化せんとする認識に立脚するものである。そして各論としては、委任立法に対する議会の事後的審査・承認制度について、我が国における実際上の有効性・実効性を検証することに主眼を置いている。この点、かかる制度枠組と我が国の憲法体系との整合性に関する憲法解釈論レベルでの検証作業は、すでに、こまでの研究(拙稿「委任立法への事後的議会統制-議会拒否権制度の法的有効性-」(憲法理論研究叢書(14)所収))にて一応の成果を結んでいることから、本研究では、さらに憲法政論レベルで、かかる議会統制の制度枠組が我が国の統治構造の中ではたして機能し得るものであるのか、その実効性を英国との法制度比較から検証する作業に主眼を置いている。そして昨年度までに、まず英国における委任立法の意義、史的展開経緯、および統治構造における位置付けを整理した上で、さらに、極めて顕著な増殖傾向を示す委任立法に対して、英国議会がどのような対応を図ってきたのか、これまでの法制度展開とともに、現行議会統制の制度枠組について、概ねの調査確認を行った。その上で今年度は、現行法制度の枠組について、さらに現地専門研究者へのインタビューや、多くの議会委員会資料の精査を通じて、より精緻な研究調査を進めた結果、当該制度に付随する多くの問題点をするとともに、その問題解決に向けて、英国議会はどのような制度的対応を図ってきたのか、当該英国法制度に関わる制度上・運用上の実態を明らかにすることかできた。今後、かかる成果を踏まえて、これまでの英国法制度研究を、我が国への法体系に再構成する研究を推進し、2009年度中に公表することを予定している。
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