2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730035
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
玉田 大 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (60362563)
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Keywords | 国際裁判 / 国際投資仲裁 / 損害賠償 / 収用補償 / 公正衡平待遇義務 / 判例 / 投資紛争 |
Research Abstract |
本年度は、国際裁判の既判力の研究の一環として、紛争処理機関における実体法判断の最終段階である損害賠償判断の類型化について検討を加えた。この点に関して、近年大量の仲裁判断例が見られる国際投資法(特にICSID仲裁例)を題材として選んだ。 1. 本研究の結果は、違法行為類型(収用措置と非収用措置)によって損害賠償の判断基準に大きな相違が見られるという点である。すなわち、収用事例では、ハル定式に依拠しつつ、FMV/DCFが広く採用されているのに対して、非収用措置の場合は、通常の国際違法行為と同様に、ハル定式と因果関係が用いられている。ただし、非収用事例の中には、収用措置に類似した効果(投資財産の全体的損失)がある場合には収用補償基準が用いられている。以上のように、投資協定仲裁では、損害賠償判断の類型化が進んでおり、従来、一貫性がなく混乱していると考えられてきた仲裁判断の中に一定の判断傾向を見出すことが可能であることが明らかとなった。他方で、賠償算定の結果(賠償金額)の予見可能性を高めるためには、今後の仲裁例をさらに検討する必要があるが、上の枠組みはこの点で多いに参考になるであろう。 2. なお、上記の研究の他、以下の補足研究を行った。 (1) 海外学会報告(下記参照)において、ICJ(国際司法裁判所)のジェノサイド事件判決(2007年)を題材として裁判所の推論形式の特殊性を明らかにした。具体的には、ジェノサイド防止義務の拡大解釈における保護責任論の影響を分析した。なお、この論点は、もう1つのジェノサイド条約適用事件の判例評釈(下記参照)においても詳しく論じている。また、国際裁判の判例研究の一環として、ディアロ事件判決(下記参照)の判例評釈を行った。 (2) 研究計画に従い、夏季休暇を利用してベルギー・ブリュッセル自由大学にて研究を行った。この間、資料収集を行うと同時に、既判力概念および国際裁判の機能に関して現地教授陣と詳細な議論を行い、多くの示唆とアドバイスを受けた。
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