2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730036
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 真理 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (00346404)
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Keywords | 国際法 / 域外適用 / 管轄権 / 普遍主義 / 保護主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、域外行為に対する管轄権行使について、従来のように権利としてではなく、それを制約する要因があるかという観点から検討し直すことによって、管轄権理論を再構成することである。 研究最終年度である今年度は、第1に、ジェノサイド、人道に対する罪、拷問罪などに対する「普遍管轄権」の行使について、事例分析及びその理論的検討を行った。普遍管轄権行使を正当化する学説の多くは、その根拠を強行規範の違反に求めている。しかし強行規範の違反という事態からすべての国家の利益を推定することができるとしても、具体的な管轄権行使を正当化するためには、さらに主要な関連国(犯罪行為地国及び被疑者の国籍国)に対する正当化という視点が必要となる。事例分析の結果、こうした正当化は、主要な関連国の処罰義務の不履行という事態への対処に求められるということが明らかにされた。この成果は、国際法学会における報告として発表された。 第2に、上のような現代的現象を理解する前提として、併せて保護主義を巡る歴史的展開を跡づける作業を行った。保護主義については、歴史的に見れば、行為地国の主権に対する侵害であるという主張と、国家が本来的に有する自衛の権利の発現であるという主張とが激しく対立しており、管轄権理論の発展を妨げる一因となっていた。そこでこのような対立を、それぞれの正当化事由に即して丹念に跡づけることを試みた。その結果、領域主権侵害の抗弁は、管轄権の根拠そのものを否定するものではなくむしろその行使段階における濫用を懸念するものであることが明らかになった。このような知見によって、管轄権行使を権利として把握する従来の見解に代えて、具体的な文脈においてより機能的に把握するための理論的基盤を提供することができると考える。この成果は、近刊の論文として公表される予定である。
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Research Products
(2 results)