2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730039
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福永 有夏 Waseda University, 社会科学総合学術院, 准教授 (10326126)
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Keywords | 国際公法 / 国際経済法 / トランスナショナル・イシュ / グローバル・イシュ |
Research Abstract |
本年度は、WTO協定の自発的遵守を促すための要素、特にWTO紛争処理制度の民主的正統性の問題に焦点を当てて研究を行った。研究を行うに当たっては、WTOに限らず、国際法のその他の分野における正統性や、社会学や政治学など法学以外の学問分野における正統性の議論についても注意を向けた。また、ジュネーブで開催されたWTO Public Forumに参加し、WTOと市民社会の対話に加わったほか、WTO事務局職員やWTO研究者との意見交換も行った。以上の研究成果の一部は、英文論文としてまとめ、すでに投稿を終えている。現在公表に向けて査読を受けているところである。この論文の中では、国際法の正統性が問われる理由について検討するとともに、特にWTO紛争処理制度に正統性を与えうる要素について分析した。また、WTO紛争処理制度に正統性を与えるとしばしば主張される要素(市民の参加や非貿易的利益・価値の反映)が、むしろ正統性を弱める危険性があることを指摘した。 以上のほか、民主的正統性研究の一環としてグローバル・ガバナンス、コスモポリタン・デモクラシーといった概念を研究する中で、国際法秩序と国内法秩序との間に生じつつある新たな関係性に関心を持つようになった。そうした関心を踏まえ、WTOなどの国際経済制度の開発政策を題材に、一元論・二元論といった国際法と国内法の伝統的関係を超えたグローバル法秩序の形成過程とその意義について研究を行った。この研究の成果の一部は、東大国際法研究会と、ニュージーランド国際経済法センター設立会議にて発表した。後者の会議に提出したペーパーは、修正の後、他の会議ペーパーと共に書籍として出版される予定である。
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