2007 Fiscal Year Annual Research Report
「私人・私企業対外国国家」型紛争の処理に関する国際法の研究
Project/Area Number |
19730040
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水島 朋則 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 准教授 (60434916)
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Keywords | 国際法 / 国際民事訴訟法 / 外国国家免除 / 主権免除 / 裁判権免除 / 国連裁判権免除条約 / 外交的保護 / 国際人権法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、私人や私企業に対して外国国家が損害をもたらした場合に生ずる「私人・私企業対外国国家」型の紛争を処理するためのさまざまな手続(例えば、私人・私企業の本国における国内裁判、私人・私企業の本国と外国国家との間の国際的手続(外交的保護))について、外国国家に対する私人・私企業の利益の救済という共通の目的や手続間の相互連関に着目することにより、「私人・私企業対外国国家」型紛争の処理に関する国際法という枠組にまとめ、その現代的構造と問題点を明らかにすることにある。 今年度の研究実績は、主に次の3つからなる。(1)私人の本国における国内裁判で問題となる外国国家免除(主権免除)について、それまでの判例を明示的に変更した最高裁2006年7月21日判決(対パキスタン貸金請求事件)等、今世紀に入ってから日本の裁判所が判断を下す事例が増加しており、それらの意義と問題点について、日本が2007年1月11日に署名した国連裁判権免除条約にも照らしながら検討した。(2)同じく外国国家免除に関する英国貴族院2006年6月14日判決(ジョーンズ事件)について、原審の控訴裁判決とは異なり代替処理手続の存否を考慮しなかった点を主に取り上げながら、外国国家に対する私人・私企業の請求処理手続の確保という観点から批判的に分析し、とりわけ外交的保護との比較を通じて同判決および国連裁判権免除条約の問題点を明らかにした。(3)領域外での外国国家の活動によって私人の人権が侵害された場合についての国際法(特に人権条約)の対応について、英国貴族院2007年6月13日判決(アル=スケイニ事件)を素材として考察し、その問題点を指摘した。 それぞれについて、関連する資料を入手し、研究会で口頭報告した際に受けた批判やコメントをも考慮に入れた上で、論文の形でまとめた((1)と(2)は英文)。
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Research Products
(2 results)