2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730051
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 Rikkyo University, 法務研究科, 准教授 (00335572)
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Keywords | 刑事法学 / 積極的一般予防論 / 刑罰論 / 刑事立法 / 過失犯論 |
Research Abstract |
本年度は、前年度における研究によって得られた規範論及び法益論における知見を前提に、刑罰実効性に関する議論を深めるべく、主として二つの研究領域、すなわち(1) 近時の刑事立法に関して具体的な検討を行うと共に、(2) 刑法解釈論においてとりわけ刑罰実効性が問題となる過失犯に関して検討を行った。 (1) に関しては、特に児童買春・児童ポルノ法やストーカー規制法などにおける保護法益のあり方について、従来の刑法解釈学からは正当化しにくい大きな問題があるとの理解に至った。前者に関しては、そもそも問題となる保護法益自体が明確に確定しがたい点があり、個人的法益としても社会的法益としても理解しにくい側面があることが明らかになった。後者に関しては、いわば生命・身体への保護を相当に前倒ししたものであるとの理解に至ったが、そのような理解はとりもなおさず本法の規範的な正当化の困難さをも浮き彫りにするに至った。 (2) に関しては、特に医療事故と過失犯処罰との関係を問題とする中で、過失責任の追及が有効な医療システムの構築と正面から抵触しかねない事例を検討し、過失犯処罰が逆に刑罰の目的たる法益保護と矛盾しかねない状況にあるとの認識に至った。また、医療システム内で生じた結果に対して個人責任を追及する際に問題となる責任分配原理につき、より具体的な検討を行う必要性を感じた。 このような刑罰実効性の観点からして問題のある犯罪について、いかなるアプローチが有効なのかを具体的に模索するためには、刑罰の意義に遡った検討が不可避である。この点は次年度の研究対象とする。
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