2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730051
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 Rikkyo University, 法務研究科, 准教授 (00335572)
|
Keywords | 刑事法学 / 刑事立法 / 刑罰論 / 路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例 / 児童ポルノ法 |
Research Abstract |
本年度は、前年度までの研究によって得られた規範論・法益論に関する知見、及び近時の刑事立法に関する知見を元に、重罰化・犯罪化の進行、すなわち刑罰拡散化時代を象徴する事例の一つである路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例に関して刑罰論の観点から研究を行い、更に児童ポルノ法についても分析を深めた。 路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例は、いずれも1990年代以降に制定されるようになったが、後者に関しては刑罰たる罰金を科すものが相当数見られるのに対し、前者に関しては非刑罰的制裁である過料を科すに過ぎないものが殆どであり、「刑罰回避傾向」が見られる。こうした差異は、両条例を一元的に理解することの不当性を示すものであり、むしろ、両条例は刑罰論という観点から決定的に異なった構造を有するのではないかとの結論に至った。すなわち、刑罰が他の非刑事的制裁と異なる点は、行為者に国家ないし地方自治体が公的に「非難」というメッセージを伝達する点にあるが、路上喫煙条例においては、路上喫煙という行為を非難するというメッセージが「喫煙者」を非難するというメッセージに誤変換される構造にあり、この点が、ごみのポイ捨ての一環として吸殻のポイ捨てについても処罰するに過ぎないポイ捨て条例と決定的に差異があることを論じた。 また、こうしたメッセージの誤変換という議論が、他の刑事立法の妥当性評価においても有効なことを明らかにした。例えば、児童ポルノ法を巡って近時問題となっている単純所持の犯罪化については、当該行為の法益侵害性の実質を明確化しない限り、児童ポルノを所持するような人間の人格それ自体を非難することに繋がりかねず、妥当な立法となりにくい点を論じた。
|