2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代型過失犯罪に対する刑事法上の対応に関する比較法的研究
Project/Area Number |
19730054
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古川 伸彦 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00334293)
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Keywords | 刑事法学 / 刑法 / 犯罪論 / 過失犯 / 客観的帰属論 / 刑事政策論 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
本年度は、年度後半から、当初の予定どおり、本研究が比較法の対象とするドイツの、ハイデルベルク大学刑事学研究所において、客員研究員として所属・研究した。その前提として、年度前半においては、我が国の議論に関する重要な資料を、とくに判例状況を分析するための基礎となるマテリアルを収集した。刑事過失をめぐって、近年の我が国の判例・学説は、ドイツの「客観的帰属論」に、意識的または無意識的に影響されている。ドイツ刑法学において構成要件的帰属の基礎を成す概念(たとえば「許されない危険(unerlaubtes Risiko)」の創出や、その「実現(Verwirklichung)」)は、すでに我が国においても、過失犯罪の成否(なかんずく因果関係の要件の充足の有無)の判断に際して-明示的には言及されなくとも-大きな意味を与えられている。そこで、年度後半から開始した在外研究に当って、主としてドイツにおける客観的帰属論の展開に着眼した。具体的には、いまだ我が国に紹介されていない文献等を収集・分析することによって、同問題に関して見識を深めた。また、近年のドイツの刑法解釈論は、刑事政策論と密接な連関を有している。ハイデルベルク大学では、刑事学の教授と社会学の教授の共同開催によるゼミナールへの出度等を通じて、刑事政策論や犯罪社会学といった重要な隣接領域にかかる学問的な知見も獲得した。さらに、弁護士・検察官・裁判官ら法曹実務家のもとへフィールドワークに赴くことによって、抽象的な法理論それ自体のみならず、その具体的な適用のありようについても見識を深めた。くわえて、ドイツの他大学を訪問しての研究者との情報交換、国際刑法学会若手部会に出席しての研究者との情報交換等、在外研究のメリットを十分に活用して、研究を進めた。来年度は、我が国の最新の議論もアップ・ツー・デートに収集・分析しつつ、比較法研究を深めていきたい。
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