2007 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員制度の下における証人尋問の意義と調書の用い方に関する研究
Project/Area Number |
19730055
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 睦 Mie University, 人文学部, 准教授 (70362332)
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Keywords | 証人審問権 / 伝聞法則 |
Research Abstract |
裁判員制度のもとでの適正な事実認定を確保するためには、被告人側に対しても立証・防御活動の手段を充分に与え、公判審理を充実化させることが不可欠である。本研究では,アメリカにおける証拠開示をめぐる議論及び連邦憲法修正6条の対質権をめぐる議論と、同じく修正6条の強制手続請求権をめぐる判例・学説の議論とを併せて検討することにより、被害者保護等の重要な利益をも保護しながら、被告人にとって重要な証人についての充分かつ必要なせ番問の機会を保障し、公正な審理を確保する手続のあり方を模索する。今年度は、その手始めとして、アメリカ連邦法域における対質権及び強制手続請求権をめぐるこれまでの判例・学説上の議論を整理し、分析した。その結果、近年の連邦法域においては、対質権をめぐってこれまで指摘されてきた権利縮減の動きに歯止めをかけるために、侵害の基準を証拠の「信頼性」におく従来の判例法を改め、手続的保障としての権利の価値を重視した基準を確立することが新たに試みられていることが確認された。また強制手読請求権については、証拠が重大性を持つ限り、被告人が求める公判内外でのあらゆる防御活動を「完全な弁護を提示する権利」として保障し、その制限を「恣意的」なものとして厳格に禁じる立場がとられていること、しかもその保障の実効性を高めるために、尋問手続の実現に向けた義務を訴追側に対して積極的に賦課する動きがあることが確認された。しかしまた他方で、上記のように権利保障を充分にしつつも、証人が専門家証人である場合や被害者たる証人である場合に、権利保障の限界も設けられていることも突き止められた。以上の研究成果については、来年度の日本刑法学会第86会大会においても一部報告するとともに、来年度発行する紀要等において論稿としてまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)