2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730056
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
嶋矢 貴之 Kobe University, 法学研究科, 准教授 (80359869)
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Keywords | 没収・追徴 / 刑法の国際化 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画に従い、まず、既存の没収・追徴規定の文献の検討、及び新たな問題のフォローアップを行った。具体的には、特に本年度下された平成20年4月22日最局裁判決について、仔細な検討を行った。この判決により、徒来、決着を見なかった、犯罪収益を直接は得ていない(狭義の)共犯者について、どの範囲まで没収・追徴の対象となりうるかという、本課題の重要な問題の1つにつき、最高裁の立場が明らかになった。条文解釈の点からも、また利益剥奪の趣旨という観点からも正当化できる結論であるとの検討結果を得ると同時に、その射程があくまで幇助犯に限定されて示されたものであり、その余の関与形態については、なお問題が残るといえよう。 また、政策的観点から見れば、困難性を前提としつつどこまで実質的利益計算の上、剥奪を行うか、単純性と抑止力を重視して可能な限り-場合によっては実質的獲得利益を超えでも-剥奪を行うかという対立軸につき、従来は後者をベースとする判断が多くなされていたが、初めて前者のスタンスからの最高裁判決が出され、実務化することになるという分析ができる。 以上の成果は、代表者による脱稿済み校正前の分担執筆著書(注釈書)において、加筆を行い、その一部を明らかにする予定である。 また、ドイツにおいて在外研究を行い、上起と同様の問題につき、ドイツにおいてはどのような対処がなされているか、またヨーロッパ化という立法の国際的要請をより強くうけているドイツにおいて、本分野においてどのような対処がなされているか、についての資料調査を行い、特に、近年の動向と現実の動態につき、来年度にわたってその検討と一定の知見の獲得を目指し研究を継続中である。
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