2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730059
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
嘉門 優 Kokugakuin University, 法学部, 准教授 (40407169)
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Keywords | 法益 / 刑事立法 / 実質的犯罪論 / 抽象的危険犯 / 行政刑罰法規 / 形式犯 / 経済犯罪 / 住居侵入罪 |
Research Abstract |
本研究において、前年度は、法益論の再検討という視点から、これまで法益概念に立法批判についての過剰な期待をかけすぎてきたという理由から、「法益とは何か」ではなく、「どのように法益が侵害ないしは危殆化されたか」という点に着目しなければならないとした。そして、犯罪構造のより詳細な分析、特に、「抽象的危険犯」のカテゴリーに着目し、法益の観点からより詳細な分析・分類を行った。今年度も引き続きその点からの検討を行い、特にその問題状況が現れる、経済犯罪の分野や、条例などに多く見られる「行政刑罰法規」について検討してきた。さらに今年度は、法益論において前提とされてきた「立法批判的機能」とはどのようなものだったのかということを検討するためより根本的な検討を行うという趣旨から、法益論と関係性を有する、実質的犯罪論、刑法の最終手段性、補充性原則の検討も行ってきた。そして、前年度に引き続き、法益論の各論的検討も同時に変更して行ってきた。具体的には、経済刑法に関する入門書である「新経済刑法入門」において、法益論を通じた経済犯罪の実質の検討を行ない、その成果を公表した。さらに、法益の実質的検討があまり深められておらず、最近問題となっている住居侵入罪の保護法益の検討を行うことを通じ、犯罪の実質面としての法益侵害のあり方について検討を行った。以上のような検討を通じ、法益のより詳細な分析を行い、みせかけの法益を排除すること、さらに、抽象的危険として一つにまとめられているものをより細かく分析することで、犯罪類型が詳細に分類され、形式犯を排除すること、この2点により妥当な処罰範囲を示し、刑事立法の一指針とすることができるのではないかと考えている。
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