2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730064
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米村 滋人 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (40419990)
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Keywords | 損害賠償法 / 製造物責任 / 不法行為要件論 / 損益相殺 / 不法行為目的論 |
Research Abstract |
本研究は、製造物責任立法をはじめとする無過失責任領域の拡大傾向などを背景に、損害賠償制度の救済法たる性質の妥当範囲を明らかにし、他の諸制度との相互関連性に着目した個別解釈論を検討することを目的とする。前年度までで、ドイツおよびアメリカの製造物責任における欠陥判断とその法的性質につき一定の知見が得られたことから、引き続き当該年度は、この点をまとめて成果論文として起稿するとともに、損害賠償法の救済法としての性質を基礎づける他の諸制度についても検討を行った。 まず、製造物責任に関しては、ドイツおよびアメリカにおける具体的事例での欠陥判断につき多面的な分析を加えた結果、少なくともドイツ学説では、欠陥判断は義務違反としての性質を有する場合があるとの理解が有力化しており、わが国でもドイツと同様EC指令をモデルとして製造物責任立法がなされた経緯やわが国製造物責任法に関する一般的解釈に鑑み、この理解はわが国にも妥当すべきことが明らかにされた。結果として、製造物責任は一種の義務違反責任として説明される。 また、一般的な損害賠償法の救済法としての性質を基礎づける法技術として、各種の損害論や損益相殺法理を取り上げ、その判例法上の位置づけと法理論的意義につき検討を行った。特に、近時注目される「相当程度の可能性」侵害法理には、加害行為自体に内在する抽象的な損害発生可能性の増加を法益侵害と捉える考え方と、実体損害に近接する具体的な損害発生可能性を法益侵害と捉える考え方が混在しているが、前者は制裁法としての損害賠償法、後者は救済法としての損害賠償法に親和的であり、これらを区別した法運用が重要であることが導かれた。 本研究によってもなお未解決の問題は多いが、ここで導かれた一般的帰結の理論的意義は大きく、今後の当該領域に関する検討にあたり極めて有用な視点が得られたものと考えられる。
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